フルカーボンフレームの誕生とともに生まれたケストレル。
1992年に発表されトライアスロン界を席巻したシートチューブレスの「500SCi」が代表的なモデルです。
新日鐵がOEM生産をしていた頃ですので品質も高く、メイドインジャパンの刻印があったりするのですが、バブル崩壊や円高の影響で日本のカーボンロード製造はこの時代を最後に途絶えてしまいます。
そのシートチューブレスデザインを受け継いだ最終モデルが今回ご依頼のAirfoilPRO SLです。
現在はFUJIやSEバイクなどと同じ大手のAdvanced Sports グループに所属していますが、このバイクの生産は2013年まで、2015年以降は国内の正規代理店もなくなっておりスモールパーツの入手が非常に困難です。
今回はシートポストの固定がうまくいかないという事でご相談頂いたのですが、様子を拝見させてもらうとシートポストに大穴が…
おそらくシートポストを固定するためのプレートがどこかのタイミングでなくなってしまったまま乗り続けてしまった結果の惨状でした。
唯一無二と言っても良いシートチューブレスのケストレルをシートポストが無いというだけで乗れなくしてしまうのは勿体ない!という事で今回はピラーの修理とプレートの作成を行いました。
まずはイモネジが噛み込んだピラーを回収。幸いめねじ側のダメージは少なかったのでクランプまで作り直さなくても良さそう。
カーボンピラーの修理はお馴染みカーボンドライジャパン様に依頼。
大穴を秘密処理で穴埋め。そのままでは強度に不安があるのでピラー内部にも補強をして完成!
お次はクランプの隙間に収まる形状のプレートを作成へ。
プレートはピラー側の曲面に合わせた精度を要求される事から超精密加工が得意の港区「トヨダインダストリー」様へ協力依頼させて頂きました。
フレーム内部を型取り、あたりをとったのち試作品をいくつか作成。
最終的にチタンのブロックから削り出し…
手作業でピラーの絶妙なカーブを支える形状に最終調整。
幸いなことに、ものづくりの拠点として愛知県はさまざまな加工のプロフェッショナルが集まっている地域。
うまく橋渡しをさせて頂くことでサイクルライフのお助けができればと思います。
一部の損傷で修理不可能と諦めてしまうにはもったいない、思い入れのある自転車などありましたら是非一度ご相談下さいませ。
お時間と費用は掛かりますが可能な限り対応させて頂きたいと考えております。
本日はここまで、ありがとうございました。
スポーツバイクメカニック 横山ヨーイチ